影武者。


 マイケルには影武者が何人もいるとまことしやかに語られている。


 でも、そこそこ売れている歌手だったら1人はいるものだ。
ステージ上、スタジオ撮影の際、スタンドイン要員は必ずいる。
影武者がどうのこうのと言われたのはこのことではないかと思う。


私の相方はあるアーティストを敬愛している。
私には良さがさっぱり理解できないが…。


後、数日でそのアーティストの専属スタンドイン係になるかどうか決まるんだって。
最終選考はアーティスト本人が選ぶそうで。
まあ、相方で決まりだろう。
いや、組んでるからとかそういう欲目ではなくて。
客観的に見ても最終選考に残った人が非常識過ぎた。
それに、こっちはちゃんとしたアー写もあるしなあ…。
彼女は謙遜してたけど、これはどう考えたって彼女で決定説が濃厚だろう。


 それが決まると、さてさて。
私はこれ以上にヒマになってしまう。
決定すれば、彼女は年末ライブのために振り入れもしなきゃならんので、私は完全ロンリーだ。
その間、何をすればいいのかと言うと…まあ…HP作成やらアー写加工やらPV作成。
私は改めて暗い作業が性に合うということが実証された。
だって、その話を聞いた時喜び半分安心半分だったんだもん。
ああ、これで好きなモノ作りに没頭できる!!!
それにこれをきっかけに彼女は今の事務所を離れられるし。


 彼女の生活も安定するし、私は相方に急かされることなく、マイペースに作業ができる。
チーム名を借りて、そのままピンでイベントには出れる。
つまり私の好き放題にできるのだ。


 相方にとってはこれは人生で最大のターニングポイントになるわけだけど…私にとってはやっと安心できる時期が到来したことになる。
モノを作りながら自由気ままに仕事をして、踊って…。
基本的に人のバックアップが好きなので、彼女のプロモーションのためにまたモノを作り…。
流行をリサーチしてそれをフィードバックして…。


なのでなので。どうかどうか彼女が受かりますように。