私はとても幼稚な生き物だった。
いや、だったじゃない。今もだけど。
風景を見ても、それほど感動を受けることはなかった。

例えば、花を見たり、山を見たり、海を見たりで感動できる同級生がそばにいれば、心の奥底から「本当は感動なんてしてないんだろ?大人が言うから、真似してるだけだろ?」なんて、冷ややかな目で見ていた。

そう、特にきれいな自然の風景には何の感動も覚えなかった。
それには理由がある。
ガールスカウトで自然には触れていたし、海も近くにあったからだ。
だから、自然を「ああ、きれいだ。」なんて悠長に他人事に受け止められない必死さが心のどこかにあった。
どうしても、きれいな自然って怖かったんだよな。
どうにもならない規模だっていうのは小さい頃から感じていることだから、ボケーっと見てられなかった。
自然って、日常の平衡感覚を狂わせるでしょ?
そのうえ、きれいだったら、油断させられるじゃない。
それがとにかく怖かった。

 だけどね…最近、素直に感動できるようになっちゃったから大変。
平和ボケをしてる証拠だと思う。
その油断から、突然、ガブガブっといかれちゃうんだろうな。いつか。
こうやって、危険に対する意識がなくなって、鈍感になって、大人になっていくんだろう。
そして、感情の起伏が無くなっていくんだろう。
まるで、私の祖母のように。
…おばあちゃん、あれからお財布は見つかりましたか?



Digable Planets - 9th Wonder (Blackitolism)