処理能力

私の同級生はもう隣町にいない。
彼女は頭の切れる女性だった。
いや、頭が良すぎたっていうほうがぴったりな表現だ。
だからこそ、自己犠牲に走ったのだろう。
じゃないと彼女を取り巻く世界が終わってしまうから。
その彼女の世界の中に私も含まれていた。
彼女は物事の処理能力が高すぎるゆえに、一度、バグが発生しようものなら大変なことになる。
それまで、絶妙なバランスを保っていたものが、音を立てて崩れてしまう。ここで問題なのは、それが一般のレベルに比べ、広範囲に至るところである。
彼女は私に助けを求めてきた。
なぜなら、私が、彼女の苦しみを理解を示し、無条件に助けようとする超純朴な馬鹿だと知っていたから。
彼女はボロボロな姿を見せてくれた。
ソファーの下の血痕を見た時は、軽蔑と喜びが混じった不思議な気持ちになった。
彼女は女優のように美しくて、勉強もできて、お金持ちで、私の知りえない世界の人脈もあって、思春期時代の憧れだったから。
彼女の住んでいた街を歩くと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
何の力にもなれなかったからだ。
結果的に深く、彼女を傷つけてしまった。
でも、私はわがままな人間だ。
そんなひどいことをしたくせに、彼女に会いたいと思っているからだ。
どうやって、あの苦しみを乗り越え、今に至っているのか、その方法を教えて欲しいと思っているのだ。
「それぐらい自分で考えろや」と思っている反面、本気で彼女に問おうとしている私は罪深い人間だ。